電車の揺れ

 電車の椅子に座ってるとレールの起伏等で時折ガタンゴトンと振動がする。そんなの当たり前じゃんと思うけれども、子供の頃ってふわふわしてた気がした。ちょっと足を上げて椅子に座ってみると不思議と振動をほとんど感じない。

子供の頃は振動が少しでもあるとすぐに酔って具合が悪くなってしまっていて、身長もないのでぶらぶらと足をさせている時はすんなりと眠りにつけた気がする。大人になってからはむしろ振動が心地よく、むしろ振動がない方が不安になってしまうような気がする。

これって多分だけど、子供の頃は盲目的に木を見て森を見てなかったから、森が見えると急に怖くなって現実から目を背けて理想を追っていて、大人になると木を見るより森を見たくなって森が見えてる自分に安心してるけど木の一本一本に目をやることができなくなってる事と似てる事なのかもしれない。

 気づかないうちに大人になってるんだなぁと感じながら、たまに子供の頃ってどうだったか思い出すのも楽しい。子供のままでいたい。

AirPodsと4日間(インスタ3分即席小説)

AirPodsを落とした少女は、その日音楽を失った。彼女にとってそれは、唯一無二の言葉を交わすものであった。自身が奏でたものとそれに言葉をあてがう人々との対話。それは彼女にとっての生き甲斐であり、希望だった。音楽がない世界は、自分の音を誰かに見つけてもらうことで生きる希望を見出していた彼女にとって、言葉にできないもので、その喪失は計り知れないものであったのである。

私は言いたい。AirPodsを返してくれ……

ポケットの穴を、心に空いたこの穴をどうにかして埋めたい。音を受け入れるその場所は、空虚な風だけを受容するしかなく全ての思考を掻き消してしまうのであると……